JR北海道キハ285系、未使用で廃車か
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0263551.html
新型特急285系 未使用で廃車へ 開発に25億円 JR北海道:北海道新聞(どうしんweb)
より高速で、より高効率な特急形気動車を目指して、2011年4月より開発に着手されました。
主な性能として挙げられるのが、
- 『振り子装置』と『車体傾斜装置』の両方を搭載した『複合車体傾斜システム』
- 『MA(モータ・アシスト)ハイブリッド駆動システム』
の搭載です。
まず一つ目の複合車体傾斜システム。
通常の車両では『振り子制御』か『車体傾斜装置』のどちらか一つが採用されるのですが、このキハ285系では両方を搭載した世界初のシステムです。
これにより車体を8度傾斜させ、通常90km/hで走行するカーブを140km/hで通過することが可能となりました。
二つ目のMAハイブリッド駆動システム。
ディーゼルエンジンと電気モーター、バッテリー等を組み合わせた駆動装置です。
気動車の動力効率向上と環境性能の充足とを両立し、これらの低廉なコストでの実用化を企図して開発されました。
まさにJR北海道の努力の結晶とも言える次世代特急形気動車。しかし、ある重大な問題が発覚しました。
このキハ285系が高性能すぎたのです。
どういうことかと言いますと、新機軸を積極的に採用したことにより、とにかく製造コストやそれを維持するための保守コスト等が嵩むのです。
- 高度な新技術の搭載による車両製造コストの増大
- 複雑な車両構造によるメンテナンスコストの増大
- 新技術の導入による信頼性の問題
- スピードアップにより線路に与えるダメージが大きくなり線路保守コストが増大
これらに十分なコストをかけられないと安全上の問題が発生しやすくなります。
そしてその矢先の2011年5月27日、
『石勝線特急列車脱線火災事故』が発生。それ以降もトラブルが相次ぎ、この事故を皮切りにJR北海道のずさんな安全管理が徐々に発覚していきました。
これによりJR北海道は『安全最優先』とし、安全対策の重点投資を余儀なくされたのです。
当然の如くスピードアップは断念。
キハ285系の必要性も薄らいだことにより、2014年9月に正式に開発が中止されました。
これと同時期に完成した試作車3両については、『総合検測車』としての活用を検討。
調査が行われてきましたが、多額の費用をかけて検測車に転用するぐらいなら、新しく検査車両を導入する方が安上がりだという結論に至ったのです。
ただでさえ厳しい経営状況となっているJR北海道。
また、赤字と言われている北海道新幹線を抱えた現在では改造費用も惜しいというところでしょうか?
目的を失ったキハ285系は苗穂工場に保管されたままであり、今後の活用については検討するとあるものの、廃車が濃厚とされています。
この車両の開発にかかった費用はおよそ25億円。
多額の費用と共に、日の目を見ることなく終焉を迎えることとなりそうです。
(実車の画像はどうしんwebから引用)